F. Caraceni

ミラノの別注オーダーメイド

フェルディナンド・カラチェニの物語

フェルディナンド・カラチェニは、「芸術が芸術であることをやめ、それが産業へと移行する境界線が存在する」という言葉を残しています。彼は決してその境界線を越えようとはしませんでした。

La storia del Maestro Ferdinando Caraceni

国際的に名高い仕立屋であり、洗練され革新的で、彼自身がイタリアの職人的高品質の熱心な愛好家でもあったフェルディナンド・カラチェニは、彼の名前を冠したテーラーの創業者です。60余年に渡りその作業台で仕事に打ち込み、20049月にこの世を去った後も、彼の仕事場には、今もなお、変わらない精神、品格、そして偉大なる名匠の比類なさが残っています。

彼の確立した様式とその教えは、会社の伝統を継続させていく創造的な職業人の遺言として、もはやこの仕立屋の「工房」のかけがえのない財産となっています。

フェルディナンド・カラチェニは、偉大なテーラーであると同時に、偉大な人物でもありました。彼の仕事において謎や秘密といったものは存在しませんでした。それは、彼自信の歴史が物語っています。

16歳の時、既に「完成した」職人であると誇りをもって自負していた彼は、かの偉大なるドメニコ・カラチェニの元へ働きに出ます。奇妙な、しかし決定的ともいえる偶然ですが、彼ら二人は、530日という同じ日に、アブルッツォのオルトーナ・ア・マーレという同じ場所に生まれました。こうした相似点は間違いなく運命の仕業と言えるでしょう。

テーラーでの彼の人生は、その後アウグスト・カラチェニの傍らで、29年間来る日も来る日も美しい仕立てと上品なスタイルに愛情を注ぎながら洗練されていきました。

そして1967年、フェルディナンドにとって重大な日がやって来ます。彼はもう独り立ちし、いつでも新たな冒険に出る準備はできていると常々感じていました。こうして「彼の」テーラー、「サルトリア・フェルディナンド・カラチェニ」が誕生したのです。

毎年毎年、フェルディナンドは、裁断、縫製、実験、そして「創作」をしながら、彼の仕事場における全ての生産工程にかかわっていきました。

しかしながら、彼は教育的なことに、より大きな関心を抱いていました。彼と共に成長し、文字通り彼のスタイル、ラペル、ショルダーの構築、そして彼が大いなる情熱を抱いている昔ながらの手仕事の秘訣を学んでくれる工員を育てたかったのです。そうしたことから彼は、少数の非常に熟練した工員によって作るスーツは年間400までに限定する、という選択に至りました。まさにそれこそが、彼の言う「芸術が芸術であることをやめ、それが産業へと移行する境界線」であり、それを越えることは真の芸術家である彼にとって想像も及ばないことだったのです。Nicoletta Caraceni, Sartoria Caraceni

そして2004年、フェルディナンドはこの世を去ります。しかし、彼の精神は今も生き続けており、彼の教えが確かなものであったことを証明するように、20年以上父と一緒に働いてきたニコレッタ・カラチェニが、同じ信条に従って、完全なる手仕事を貫き、着る者に特別な価値と自尊心を与えるスーツを求めるお客様に専念すべく、テーラーを引き継ぐことを決意します。

今日、サルトリア・カラチェニはイタリアの卓越を象徴するものとして世界中で知られています。ニコレッタは、父が彼女に教えたように、執拗なまでに質にこだわるという伝統を受け継ぎます。それは生地の選択に始まり、英国産生地、スコットランド産カシミア、アイルランド産リネンなど、絶えず最高のものでなければなりません。

カラチェニのスーツは万人向けのものではなく、詩情と愛情を伝える唯一無二のスーツを求める方に向けて作られています。スーツは確かな愛情をもって着想され、具現化されているのです。以上、限られた行数ではございますが、サルトリア・フェルディナンド・カラチェニが持って生まれ、実践する精神を皆様にお伝えしてきました。以下、私共が手掛けるスーツの製作手順や主要モデルについても引き続きお読みいただけますと幸いです。